先に結論です。薬剤師が薬のことを考えるとき、見ているのは「処方されている薬」よりも、その方が実際に飲めているかどうかと、いま出ている困りごとを薬で説明できないかの2点です。逆に言えば、この2点についてみなさまがお持ちの情報は、私たちには見えていません。お手元の情報と私たちの薬の知識が合わさると、打てる手がはっきりします。
ケアマネジャー、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、施設の職員のみなさまなど、サービス担当者会議や退院時カンファレンス、大府市の地域ケア会議などでご一緒する機会があります。そうした場でも、日々の電話でのご相談でも、薬剤師が考えていることは同じです。ここでは、その見方の部分を共有します。ご相談いただく前の当たりをつける材料としてお使いください。
1. 処方されている薬と、飲めている薬は別のもの
処方箋から分かるのは、飲むことになっている薬までです。私たちが知りたいのは実際に口に入っている薬のほうで、この2つはしばしばずれます。そしてこのずれは、薬局の窓口や処方箋からは見えにくく、生活の場に入っている方のほうがずっと早く気づかれます。
もうひとつ大事なのは、「飲めていない」が、原因によってまったく別の問題に分かれることです。
- 忘れている — 飲む意思はある。仕組みで解決できる可能性が高い
- 飲みたくない — 効果を実感できない、副作用がつらい、薬そのものに不安がある。説明のやり直しや処方の見直しが要る
- 飲み込めない — 剤形の問題。同じ成分で形を変えられることがある
- そもそも手元にない — 受診が止まっている、薬をもらいに行けていない、費用の負担感がある
この4つは対策が正反対になることもあります。「どう飲めていないか」まで分かると、そこから先は一気に具体的になります。もちろん、その場で分からないことも多いと思います。「残薬がたくさんある」というだけの情報でも十分に手がかりになりますので、まずはそのままお聞かせください。
2. 自己判断で中断されると影響が大きい薬がある
飲めていない薬が見つかったとき、薬剤師はまず「それは今日中に医師へ連絡すべき中断か、次の受診時で足りる中断か」を考えています。薬には、やめてもすぐには変化が出ないものと、急にやめること自体が体に負担をかけるものがあります。
たとえば血圧の薬、血液をさらさらにする薬、ステロイド、パーキンソン病の薬、てんかんの薬、糖尿病の薬などは、自己判断での中断に注意が必要な薬として広く知られています。服薬の中断に気づかれたときは、薬の名前だけでもご連絡いただければ、緊急度の目安をお答えできます。「これくらいで連絡していいのかな」という程度で構いません。
3. 転倒・ふらつき・日中の眠気は、薬の側からも検討できます
転倒歴や「最近ふらつく」というお話をうかがうと、薬剤師は処方一覧を見直します。眠気やふらつき、立ちくらみ、口の渇き、便秘、排尿の困難といった症状が、薬の作用によって生じている場合があるためです。睡眠薬・抗不安薬、一部の血圧の薬や前立腺の薬、風邪薬やアレルギーの薬に含まれる成分などは、まず確認してみるところです。ただしこれらの薬を飲んでいるからといって、それが原因ということにはなりません。飲み始めた時期と症状が出た時期、他の要因と照らし合わせて、はじめて判断できるものです。
転倒への対策は、リハビリや住環境の調整が中心になると思います。そこに薬の側からの確認を1本加えておくこともできます。ふらつきに関わっている薬がないかを見直す部分は、薬剤師にお任せいただけます。
同じように、日中の眩さや元気のなさが薬と関わっていることもあります。気になる変化があったときは、薬の面からも見てみますのでお知らせください。
4. 独居かどうかで、提案できる方法が変わります
同じ処方でも、ご本人が管理しているのか、同居のご家族が管理しているのか、日中は独居なのかで、提案できる方法が変わります。一包化にするのか、日付を入れるのか、服薬カレンダーで週単位に組むのか、1回分ずつしか取り出せない機器を入れるのか——ここは生活の形が決まらないと選べません。
薬の知識だけでは決められない部分なので、ここはいつも教えていただいて助かっているところです。
ご相談のとき、これがあると具体的な話ができます
- お薬手帳の直近数ページ(複数の医療機関にかかっている場合は、分かる範囲で)
- 残薬があるかどうか、あればだいたいの量(「引き出しにたくさん」で構いません)
- 薬を受け取っている薬局が1か所か、複数か
- 市販薬・サプリメント・湿布など、処方薬以外に使っているもの
- 飲み方をどなたが管理しているか
市販薬とサプリメントは、お薬手帳に載らないため見落とされやすいものです。処方薬との組み合わせで注意したいものもあるので、お気づきの範囲で教えていただけると助かります。
ご相談のあと、薬局としてできること
薬に関する課題が見つかった場合、当薬局では次のような形でお引き受けできます。
個別のご相談・同行
ご相談はいつでもお受けしています。ご自宅への同行が必要な場合は、日程を調整のうえでできる限り対応します。
主治医・訪問診療医への橋渡し
処方の見直しが必要と判断した場合、薬剤師から医師へ書面で提案できます(トレーシングレポート等)。医師への訪問指示の確認も当薬局から行えます。
訪問(居宅療養管理指導)の導入
ご自宅へ伺って、薬の整理・一包化・服薬カレンダーの設置・飲み方の再説明まで行います。訪問ごとに報告書をケアマネジャーさまへお送りします。在宅医療のご案内
服薬の管理方法については、一包化のほか、決まった時間に1回分だけ取り出せる服薬支援ロボット(コッくんお薬よ~)の貸出も行っています。飲み忘れが主因の場合には有効な選択肢です。
「どこで何をもらっているか分からない」とき
複数の医療機関・複数の薬局を利用されていて、全体像が誰にも見えていない——支援の現場でしばしば行き当たる状況だと思います。
当薬局では、訪問先でマイナンバーカードをスマートフォンで読み取る居宅同意取得型のオンライン資格確認を運用しています。ご本人の同意のうえで、他の医療機関で処方された薬や過去の調剤の情報を参照できる仕組みです。お薬手帳が続いていない方や、ご本人の記憶があいまいな場合でも、薬の全体像を確認したうえで支援を組み立てられます。必要な場面がありましたら、お気軽にお声かけください。
ご相談の受付について
「薬のことで気になる方がいるが、相談していいものか分からない」という段階で構いません。当薬局を利用されていない方についてのご相談でも大丈夫です。サービス担当者会議・退院時カンファレンス・地域ケア会議への出席もお受けしています。
当薬局の対応範囲(対応エリア・無菌調製・医療用麻薬・24時間対応など)は、在宅訪問の対応範囲まとめにまとめてあります。